2007年1月24日

真冬の棚田でカエルのラブコール

昨年2月の初めだったと思う。田んぼの生きもの調査で栃木県もてぎの棚田に、下の方から上がっていった時のことだ。山間に開かれた棚田は、弱い冬の日差しの中、じっと春の訪れを待っているかのようだった。

この棚田は、30年以上放置され、草ぼうぼうだったところを、「復元しませんか、そうしたら都会から大勢の人々を連れてきます」と、メダカのがっこうから地元に要請、復元してもらったのだ。

周りの山の下草を刈り、沢を整備し、田んぼに生えていた樹木や葦などを取り除き、あぜは幅広く、歩けやすいように作り替え、4年ほど前にすばらしい棚田が復元したのだった。

冬の棚田を登っていくと、はるか先方から、キュルキュル、カラカラ、チュルチュルといった交錯した複合音が、開かれた地面いっぱいに響き渡って聞こえてきた。明らかに生きものの声だ。

「こんなとこに、鳥がやってきている。渡り鳥かな。どんな鳥かな、かなりいるんじゃないか」−生きもの調査道具を持ちながら、私たちは鳥たちが飛び立つのを恐れて、足音を立てず、静かにあぜを登って行った。

全長200メートル近い棚田の中腹に来ても、その鳴き声は止まない。相変わらず大合唱は続いているのだ。みんな、おかしい、と思い始めた。こんなに近づいているのに、鳥たちは一羽も飛び立たない!

キュルキュル、カラカラ、、、、声はするけど姿はなし、「あっ、これ、カエルじゃないかな」と誰かが叫んだ。そのとたん、声が止んだ。われわれの姿を見たのか、あたり一面ようやく静けさを取り戻した。

棚田の管理者に電話して聞いてみた。「あ、それはヤマアカガエルですよ。今頃、いちど冬眠から覚めて、土の中から出てきて、交尾するんです。オスがメスを呼ぶカエルのラブコールなんです」

いったん交尾すると、再び土の中に帰り、春の来るのを待つのだという。したがって、このカエルの奇妙なラブコールを聞けるのは、2月初めの4〜5日しかないという。

4月ごろの棚田では、たくさんのカエルの卵塊を見ることができるが、その仕込みが、冬なお寒いこの時期に行われるとは。生きものの世界の神秘に出会った、貴重な体験だった。

2007年1月18日

ベトナムの田園風景

先日の記事にコメントを寄せていただいた、佐藤かほる様から、
ベトナムの田園風景の写真が届きました。

2007年1月12日

郡山で「白鳥の田んぼ」が人気

福島県郡山の仲間で、冬も水を張る「冬・水・田んぼ」を続けているのが、中村和夫さん、増戸義治さんです。農家紹介欄にも書いてありますが、4,5年前から田んぼに水を張ったら、それぞれの田んぼに白鳥が飛来するようになり、今では双方で300羽を超えるようになりました。

白鳥はベジタリアンです。耕さない冬・水・田んぼには、稲株が残っており、稲の根が生きているので、落穂とともに美味しいご馳走なのです。耕すと、そのご馳走が土の中にすき込まれて埋もれてしまうので、耕した田んぼでは食べ物にありつけません。ですから、白鳥にとって耕さない冬・水・田んぼは大好きな食卓でもあるんです。

土・日になると、地元の人たちが子供やお孫さんを連れて、白鳥に会いにやってきます。何もない冬の農村地帯にあって、ちょっとした人気スポットになっています。田んぼは米だけをつくるところではない、ことが実感できます。

3月17日、この白鳥を見送る「また会うべ会」を行います。白鳥が田んぼの上空を旋回して、一路シベリアへ向けて飛び立つ雄姿を見送ろうという企画です。はたしてそう旨くことが運ぶかはやってみなければわかりませんが、ともかく集まろうというわけです。

実は、この企画が持ち上がったのは、この白鳥の田んぼが、例年ものすごい田の草に覆われ、稲が草に負けて、収量が少ないということが続いているからなのです。中村夫妻は「田んぼのお客さんだし、地元の皆さんが喜んでくれているので、いいですよ」と笑って済まそうとしていますが、ちょっと白鳥さんと折り合いをつけたいのです。例年、3月いっぱい滞在するのを、少し旅立ちを速めてもらい、農作業に取り掛かるのを早めたいのです。


というわけで、3月17日、東京駅から貸切りバスが出ます。詳細はまたお知らせしますが、ご関心のある方は、ぜひ一緒に行って、シベリアに旅立つ白鳥を見送りましょう。

2007年1月4日

雪に覆われた田んぼの中・2

もうひとつ、写真をご紹介します。

雪の田んぼで生きもの調査をする
メダカのがっこう生きもの調査隊

2007年1月4日

雪に覆われた田んぼの中

私たちが広げようとしている田んぼは、生きものがいっぱいの田んぼです。
例えばイトミミズやユスリカなど小さな生きものたち、もうちょっと大きな生きもののカエル、クモたち、それぞれがちゃんとした役割を持って、田んぼで生きているんです。
(その役割については、「自然耕米って何」というページを読んでください)

でも、冬の田んぼではそんな小さな生きものたちは、土の中で冬眠しているか、息をひそめて春が来るのをじっと待っているんです。
1年前の冬、岩手県江刺に、伊藤 茂さんという花まる農家を訪ねたことがありました。伊藤さんは、田んぼにやってくるちょうやトンボ、鳥たち生きものが大好きで、いつでもカメラを肩に田んぼに出かけるんです。
その冬も、雪の斜面に胴体着陸したキジの跡を見つけて写真に撮り、朝日新聞に載ったこともありました。

その真冬の伊藤さんの田んぼは、あたり一面雪に覆われ、見渡す限り真っ白な雪景色でした。田んぼもわずかにあぜが見えていて、田んぼの位置がわかるほどでした。
そんな雪に覆われた田んぼで、生きもの調査をやったのです。
田んぼに降り積もった雪は、上から圧縮され固く、掘ってみると45センチほどの深さでした。スコップの先に、厚さ2,3センチほどの氷が出てきました。氷を割って、ようやく田んぼの土が見えてきました。「こんな冷たい氷の下じゃ、何もいないよ」と、みんなあきらめ顔でそれでも一応土をスコップで採取しました。

と、何かが動いてる。
イトミミズだ!立派なイトミミズが、それも1匹や2匹じゃない!

土を洗って白い皿にいれきれいな水を張ってみると、いましたいました、ひとつの皿に数十匹のイトミミズがうごめいている。調査に当たったメンバーは一様に興奮、「おまえたちよく生きていたなー」と何度も声をかけていました。


そうなんです。
この時のイトミミズは、1反歩当たりに換算すると、数千万匹という驚異的な数になったのです。伊藤さんの田んぼに夏行ってみると、あぜからのぞいただけで、田んぼには本当に真っ赤なゆらゆらとうごめくイトミミズのかたまりが、あちこちに見られるんです。


土を耕してくれるイトミミズちゃん、もうすぐ春がやってきますよ!

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